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QYLDの分配金がROC(資本の払い戻し)である理由

QYLDの運用報告書を見ると、分配金の大部分が資本の払い戻し=Return of Capital(ROC)となっています。
ROCとは、元金の払い戻しであり、QYLDへの投資金がホルダーへ還元されていることを意味します。
例えば2020年の1口当たりの分配金$2.45に対し$2.39が資本の払い戻しでした(運用報告書)。

この記事では、QYLDの配当がなぜROCになっているのか、私なりの解釈を紹介します。

てくお
この記事を書いております てくお と申します。私もQYLDに投資しており、QYLDのROC配当について気がかりだったので調査を続けてきました。この記事ではROC配当について私なりの解釈を紹介させて頂きます。ただ、私は法律や税金の専門家ではありませんので、誤った解釈をしているかもしれません。興味のある方は、あくまで参考情報として読んで頂けると幸いです。

QYLDの分配金がROCである理由

結論です。

結論

QYLDの分配金は運用の損益に関わらずオプション収益から決定される。NASDAQ100の変動により損失が出ていても、オプション収益から決定した分配金が支払われるので、利益以上の分配が起こり得る。利益以上の分配は、資本の払い戻しで行われる。

解説していきます。

QYLDの運用報告書における運用益と分配金の関係

QYLDの運用報告書の抜粋です。

運用報告書 QYLD_delivery_investment_report.pdf

「運用による合計」がQYLDが運用によって稼いだ金額で、保有株の含み益、確定利益(オプション収益含む)、保有株の配当金の合計です。
「分配による合計」がQYLDの分配金です。

運用による合計、分配による合計、そして運用と分配の差を表にまとめました。

運用による合計 分配による合計 運用と分配の差
2016年 $0.68 $2.13 -$1.45
2017年 $4.05 $1.81 $2.24
2018年 $1.78 $2.63 -$0.85
2019年 $2.01 $2.36 -$0.35
2020年 -$0.06 $2.45 -$2.51

2017年以外は、運用益(確定利益、含み益、配当)よりも、分配金額の方が大きいです。
利益より多い分配金はどこから捻出されたのかといえば原資しかなく、原資からの分配金は「資本の払い戻し」となります。

なぜ運用益以上の分配金を出すことが起こるのか?

QYLDの毎月の分配金は、毎月の運用による利益を元に決定されていません。
オプション収益を元に下のように決定されます。

・オプション収益が2%以上の時 : 分配金は1%でリミット (注1)

・オプション収益が2%未満の時:分配金はオプション収益の半分(注2)

注1 : QYLDの価格が$23であれば、$0.23の分配金
注2 : オプション収益が1.8%でQYLDの価格が$23であれば、$23×0.018/2=$0.207の分配金

QYLDはNASDAQ100のカバードコールで運用されていますので、NASDAQ100の銘柄を保有しています。
もしその月にNASDAQ100指数が下がった場合、その月の運用による利益はマイナスになるはずです。
しかしその月の運用益がマイナスだからといって分配金が減額されたりゼロにはなりません。
上記のルールに基づきオプション収益によって決まる分配金が支払われるので、運用による利益以上に分配金を出すことが起こり得ます。

てくお
補足ですが、分配ルール的にオプション収益は分配金よりも必ず大きくなります。なので、QYLDで資本の払い戻しがあるからと言って、オプションの収益が分配金を賄えていないということではありません。

運用益以上に分配金が支払われるとどうなるか?

QYLDの価格(基準価格)が下がることになります。

ETFの価格は、保有銘柄の時価評価額や配当などの収入による資産総額を発行口で割った金額となります。
運用益以上に分配金を出すということは、資産総額が下がるのでETFの価格が下がることになります。

実際、資本の払い戻しが行われている2016年、2018年、2019年では、運用益があるにも関わらず純資産総額は期末に減少しています。これは、運用益以上に分配金を出したことで純資産が減少したことによるものと考えられます。

期初 純資産総額 期末 純資産総額 運用による合計 純資産総額の増減
2016 $23.51 $22.06 $0.68 減少
2018 $24.30 $23.45 $1.78 減少
2019 $23.45 $23.10 $2.01 減少

とはいえトータルリターンはプラス!

運用益以上の分配金となる場合は、QYLDの価格が減少していることを述べました。

ただ、QYLDの価格は下がっていますが、分配金と含み損を合算した過去のトータルリターンはプラスです。
例で示します。

・2016年の年初の価格$23.51で買った
・2020年末の価格が$20.65、含み損は-$2.86で-12%
・2016年から2020年末の間に受領している分配金の合計は$11.38。
・含み損と分配金を合わせると$8.52で、トータルリターンは36%のプラス。

その他の参考情報

てくお
今回この記事では、運用益以上の分配金がある場合はROCであるということを説明してきました。実はこれ以外にも、税制面と運用面でROCの方がメリットがあるのでファンドは積極的にROCによる分配金を選択することがあるようです。英語ですが、興味があれば見てみてください。

・GlobalXのカバードコールETFにおける分配金のTAXの考え方
 >>TAX PRIMER FOR GLOBAL X’S COVERED CALL ETFS
NUSIを運営するNationWideの分配金についての記事
HarvestというファンドのROCについての記事

まとめ【QYLDの分配金がROCである理由】

まとめ

QYLDでは、オプション収益により分配金が決定されるので、運用益以上の分配金となることがあり得る。運用益以上の分配金はROC(資本の払い戻し)となる。

尚、運用益以上の分配金が支払われる場合QYLDの価格が下がることになるが、過去実績は分配金によりトータルリターンはプラス。

私はこのような解釈をしています。いかがでしたでしょうか。

てくお
QYLDはインカムに特化したETFです。毎月安定して分配金を支払えるように設計されています。反面、この記事で紹介したように運用益以上の分配金を支払うことで価格の減少を伴うことがあり得ます。しかし、過去の実績として分配金でトータルリターンはプラス。ポートフォリオの一部に組み入れるのは有りだと考えています。

最後までお読み頂きありがとうございます!



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